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打田翠【Interview】前編〜カタチとその根底にあるもの〜 

2022.05.21

手捻りで成形された滑らかな曲線と有機的な形。

人の手で生み出された造形物でありながら

自然を見て直感的に美しいと感じるあの感覚に

どこか似た佇まいを纏っています。

ある時は夕日が沈んでいく空を彷彿とさせ

またある時は海岸で静かに語りかけてくる石のように。

私たちの想像力を刺激し、考えるきっかけを与えてくれる作品。

2017年から実に5年ぶりとなる打田翠さんの個展を

6月に開催いたします。

 

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3年前に男の子をご出産され

現在は子育てと両立しながら制作活動に励む打田さん。

自分の表現したいものが明確に頭の中にあり

それを形にしていくのが得意な作家さんだなと

出会った頃から感じていました。

ご出産後、打田さんの中で何か変化はあったのか。

現在の作陶への想いや考えていることなど。

お話を伺ってきました。

 

ちなみに打田さんのご主人はヒメミズキでもお世話になっている

陶芸家の白石陽一さんです。

大きな倉庫を改装した広々とした空間の中に

それぞれの作業場があり、奥には展示スペースがあります。

天井が高く開放的な空間に

お二人の作品がそれぞれ共鳴し合うように並んでいます。

窓の外には青々と生い茂る木々の緑と煌めく太陽の光。

調和のとれた居心地の良い空間でした。

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打田翠【Interview】

前編〜カタチとその根底にあるもの〜

 

小笹)

お元気でしたか?お子さんもあっという間に大きくなりましたね。

いかがですか?子育てとお仕事の両立は?

 

打田)

どちらもすごく良いバランスでできているように感じています。

メリハリがついたというか、逆に時間の使い方が上手くなったというか。

多分、夫婦で同じ仕事というのが良いのだと思います。

お互い大変さがわかっているので、家事も育児も分担なのですよ。

片方が子どものお迎えに行って片方が晩御飯を作る。そんな感じです。

 

小)

お子さんが生まれた事で、作りたいもの方向性の変化や

何か作品に影響があったと感じますか?

 

打)

気持ち的に何か変わるかな?と思ったのですが

そこは以前とあまり変わっていませんね。

自分はあまり左右されないタイプだというのも発見でした。

それよりも出産前後、休んでいる期間があった事でより一層

作りたいという気持ちが湧いてきました。

趣味が他にないのですよね。子どもを寝かしつけた後に

工房へ戻って仕事をしていることが多いです。

 

小)すごい!働き者ですね!

 

打)自分でもびっくりしているのです。自分がこんなに働き者だったなんて。

そこは子どもが生まれて変わったところですね。

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小)以前から石が好きだとおっしゃっていましたが

アトリエにも綺麗な石がいっぱいですね。

打田さんが作っているオブジェも石から影響を受けているのでしょうか?

 

打)石は好きですが、石みたいなものを作りたいとは思っていないのですよ。

そこを目指してしまうと

それ以上のものを作れなくなるのではないかと思って。

感覚としては、石を選ぶ時と似ていますね。

河原にあるたくさんの石の中から

自分の感覚に合うものを見つけていく作業のような。

かたち。手触り。色合い。重さ。

少しずつ厳選してこれだと思う石を見つける事と作品を作りながら

自分の目指す形を作り上げていく事。

それが同じなのだとある時に気がつきました。

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小)それが打田さんのモノづくりの原点になっているのですね。

ろくろではなく手捻りを選ばれた理由と繋がりそうですね。

 

打)ろくろはスピード感というか

ある程度勢いのようなものが必要だと思うのです。

手捻りでゆっくり少しずつ進んでいく方が自分の性格にあっているのだと思います。

結局、好きなことや夢中になることって昔から一緒なのですよね。

小さい頃、よく泥団子を作っていました。

休み時間の度に園庭に走って、くる日もくる日もひたすら泥団子を作っていたのです。

制作中に、記憶がふっと蘇ってきて、この感覚…あの時と似ていると思い出しました。

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小)大学も美大に進んでいますが、昔から陶芸家になりたかったのですか?

 

打)進路を決める頃から、何か手に職をつけたいなと思っていました。

自分には普通の仕事をするイメージが湧かなかったのです。

多分向いていないだろうと。

両親は会社員なので当時はびっくりしていたと思います。

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 久しぶりにお話をして改めて

昔から人に左右される事なく

しっかりと自分自身を見つめ

好きなこと やりたい事 向いていること

それらをゆっくり自身のペースで見極めながら

道を切り開いてきた人なのだなと感じました。

現在もその延長で

自分の好きなカタチをゆっくり探る事を続けながら

ものづくりと向き合っている。

誰のためでもなく、自分のために。

作ることで

新たな自分自身に気付く事を楽しんでいるように

私の目には映りました。

その純粋な気持ちが

打田さんにしか作れないもの生み出し

触れる私たちの心を動かすのだと。

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打田翠個展

2022.6.4(土)〜6.12(日)

Open 11:00-18:00 6/7(火)休み

※作家在廊日6/4(土)

6/4(土)は13:00まで要予約

打田 翠

1983年 兵庫県神戸市生まれ 
2005年 大阪芸術大学工芸学科陶芸コース卒業
2007年 多治見市陶磁器意匠研究所 修了
2016年〜岐阜県瑞浪市にて制作

 

インタビュー後編へ続く